えーっと,例えば.
人の頭の中に沢山の情報が記録されているとする. で,思考という行動は,これらの情報プールの中から何らかの方法で必要な複数の情報を取りだし, それらを比較・演算して結果を出力するものと仮定する.この仮定は妥当でしょう.
これを,比較・演算の部分ではなく「情報を取り出し」に着目してアナロジを用いて表現すると, 例えば,たんすの引出しにしまった小物. ある引出しにいろんな小物がぎっしり詰まっている. その中から何か必要なものを取り出さねばならない.
さて,どういう条件の人が最も早く目的のものを取り出せるか? また,どういう条件だと間違ったものを取り出す可能性が高く低くなるか?
例えば引出しの中がどれくらい整理されているか. ものが何かの順にタグ付けされてきちっと矩形にならんでいれば, 探すのは随分と楽になるだろうし,間違える可能性も減るだろう. 逆にテキトーに放り込んだだけのゴチャゴチャ状態では目的の物がなかなか見つからない.
例えば探す時に引出しの中身をよく見てじっくり探すならば目的のものはそうでないより早く見つかるだろう. 例えば右側から順に探す癖のある人の引出しが,重要な物ほど右側になるように整理されていたら, 見つけるまでの平均時間はそうでないより早くなるだろう.
さて...じっくり目的の物を探す人の引出しの中身がゴチャゴチャ状態であると, これは一般に「思考の遅い人」とされる. まず手を突っ込んでから手さぐりで探す人の引出しの中身が整然としていると, これは「すぐ様々な発想ができる人」とされる. 速度は後者が上であり,正確度は前者が上である.
プログラマやシステム屋に求められるのはおそらく前者. なぜなら作ったプログラムやシステムの稼動時間は考えている時間よりずっとずっと長いのが普通だから. でも後者がダメかというとそうでもない. このアナロジでは意図的に「情報を取り出す」部分だけのものとしているが, 結果的に取り出された情報量は後者の方が多い場合が大抵で, コンピュータと違って複数要素を並列に演算する脳の仕組みにおいては, その方が有利である場合がありうるから.
引き出しの中が整理されているという状態は,目的のものを的確に取り出すのに役立つ. じっくり探す探し方は,整理されていない引出しからも効率よく目的のものを取り出せる. 両者は,外から見ると密接に関係しているように見えるが, 実際は互いに関連はあるものの個別の要素であろう.